本日は晴天ナリ。

栗木 妙

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【前編】 /1

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【前編】



 ――ああ、いいさ。やれ、っつーならやりますよ。上官命令ですからネ。
 眼前に突き出されたそれを、ご希望どおり、咥えて舌で舐り回す。
 所詮、俺は俗物だからな。別に今さら、このくらいのことに抵抗なんて無い。女っ気の全く無い、軍なんて場所で生活してれば、どこに行っても当たり前のようにやらされてきたことだから。
 ならば、割り切って楽しむに越したことは無いだろう?
 軍に所属して四年弱、そうやって俺は、数多くの男と関係を持ってきた。
 今さら、その相手がまた一人増えたところで、どーってことない。
 ――とはいえ……俺は今、怒ってるんだよ。
「ああ……いいぞセルマ、上手いじゃないか」
 寝台に腰かけている中年男の、大きく開かれた股の間、そこに大きくそそり立っているそれを、いま俺は一心不乱に嬲っていた。舌が敏感な部分を刺激するたび、それが大きく跳ね、腰が揺らぎ、真上から聞こえる喘ぎ声も大きくなる。
「見た目通りだな……この淫乱め」
 そうやって俺を口汚く罵ることで、あくまでも自分がこの場では優位なのだと、主張したいのだろうが……コイツが余裕の無いことなんて、すぐわかる。――俺のフェラテクなめんな。年季と経験値が違うっつーの。
 ――早くイッちまえ。
 スパートをかけるべく舌と指の動きをちょっと強めにしてやったら、途端に果てた。口ほどにも無いとはこのことだ。
 ――さあて、ここからが本番。
 射精後の絶頂感でぐったりとしていたその身体を、おもむろに俺は力を入れて押し倒す。
 まさか自分が押し倒されるとは思ってもいなかったのだろう、「おい…!」と驚いたように声を上げかけたが、即座に俺が再び股間のモノを口に含んだので、その言葉は最期まで発されることは無かった。
「まだ欲しいのか……本当に淫乱だな、貴様は」
 余裕こいて言ってはいるが、すぐに再び快感の喘ぎを洩らす。
 すぐさま再び固くなったそれに、先ほど口内に出されたまま含んでいた液体を垂らしながら、入念に愛撫を加える。
 もはや抵抗することもせず快感に酔いしれている、その様子を確認して俺は、片手でヤツの片脚に手を添えるや、高く持ち上げて押し開いた。
 こうすると、よく見える。また充分にそそり立ったそれを伝い、とろりと滑る液体が、身体の曲線に合わせながら、ゆっくり下へと伝い落ちてゆくのが。
 繁みを抜けて、袋を跨ぎ、その先の窄まりまでようやくそれが辿り着いた時、俺は懐に忍ばせていた小瓶を空いた片手で取り出した。
 きゅぽん、と小さな音を立てて栓を抜くと、その中身を充分に指に絡ませてから、おもむろにその窄まりへと突っ込んだ。
「――――!?」
 その瞬間、さすがにビクッと大きく身体が跳ねる。
「おい、何を……!」
「任せてください、ここもキモチイイんですよ」
 言いながら見上げると、立ち上がるイチモツをペロリとゆっくり舐め上げる。――途端、びくっと跳ね上がるそれと、洩らされる快感の呻き。
「ね、キモチイイでしょう?」
 いきなり指なんて突っ込まれても、痛いか苦しいかの、どっちかでしかないことは承知の上だ。案の定、「やめろ!」「抜け!」と抵抗され、俺を引き剥がさんとすべく頭が掴まれたりもした。
 だが、俺もまがりなりにも近衛騎士、この男に比べればだいぶ若いし、力の勝負でも負けやしない。
 そうされながらも、突っ込んだ指を中でぐにぐにと動かすことは止めなかった。
 更には、「イヤだなあ、本当は好きなクセに」と、のらりくらりと返答しては、立ちあがっているそれを舌で嬲ることも止めない。その気持ちよさがあるからこそ、本気でコイツも抵抗できないのに違いなかった。トコトン快楽に弱いイキモノだよなあ、男ってヤツは。
 そうやって二箇所同時に刺激を与え続けているうちに、次第に抵抗する身体から力が抜けてきたのが分かった。出される言葉に抵抗の色は無くなり、快感の喘ぎに取って代わられつつある。
 ――やっと効いてきたか。
 すかさず、その入口に小瓶の口ごと突っ込んで、残りの中身の全部を流し込む。
 そうやって、先ほどヤツ自身の精液と共に、俺がケツの穴に塗り込んでやったもの。
 持ってきた小瓶に入っていたのは、性交の際の潤滑液として使われる普通の香油だけれど、そこに俺は予め媚薬を混ぜ込んでおいたのだ。――それも、すこぶるつきで効果テキメン、ってヤツ。
 本来なら少量でいいところを、規定量以上にたっぷりと混ぜ込んでおいたのだから、そりゃー効きも早いってーモンだろう。
 加えて言えば、その効果は俺自身で既に実証済みだ。
 クスリが効いてくると、まず全身に力が入らなくなり、少しの刺激でも下半身にずくずく熱が集まって、自分だけではどうにも収まりが付けられなくなる。他の誰かに突っ込もうが突っ込まれようが、一度や二度の絶頂では到底足りない。痛みなんてものがまず感じられなくなるし、自分の身体の限界までもがわからなくなる。ただただ熱が収まるまで求めるしか出来なくなる。
 だから目の前の男も当然、あんなふうに抵抗していた姿なぞどこへやった、というくらいに豹変して、今や全身をビクつかせながら寝台に沈んでいた。
 既にギンギンにそそり立ったイチモツが、更なる刺激を求めてだらだらと涎を垂らして濡れている。
「あ、ああ……早く……もっと……」
 だらしなく開いた口からそんな言葉が洩れて、ようやく俺は、差し入れていた指を引き抜いた。
 そしてすぐさま、自分のそれを、その窄まりの中へと捻じ込む。
「ぐ…ああうっ……!」
 苦しそうなのは最初だけだった。そのキツイ中で無理やり俺が腰を動かすたび、それがただの嬌声に変わる。――オッサンが善がっても全然色っぽくも何ともねーけどな。
「いいでしょう? たまにはコッチ側も」
 嘲るように告げた俺の声も、もはや届いていないに違いなかった。
 そう幾らも動いていないうちに、ヤツの強張りが爆ぜる。大量の白濁液を噴射しながらも、しかし、まだなお衰えることは無い。
「さァて、どのくらい出せるかなー?」
 その締め付けがまだキツすぎて痛いほどで、俺の快感には、まだほど遠い。だが、こう無理やりにでも動かしていたら、そう時間を置かずに、そこが俺の形に慣れる。それまでの辛抱だ。
 何をやっても、どんな痛みを与えても、今のコイツは快感しか感じない。
 俺がたった一回達するまでの間に、きっとコイツは、ケツの穴を掘られることの快感にも目覚めているだろう。
 ――そうなってから後悔でもしやがれ、バーカ。
 早々に通算三回目の絶頂に達したそれを眺めながら、俺はニヤリと歪めた唇を、ぺろりと舐める。


 やがて……既に吐き出せる精液さえ残っていないほど何度も絶頂に突き上げられては、未だ上り詰めたまま地に足の付けられない男に。
 俺はようやく、自分の欲を絞り出し注ぎ込んだ。
 そのまま、ゆっくりと身体を離す。
 まだ足りないとばかりに追い縋ってきた手をかわし、寝台から降りると、何事も無かったかのように自分の服の乱れを直した。
「もう充分でしょう? 後は自分で何とかしてください」
 あのクスリを使ったらこんなものでは到底足りないと、わかっていながら、俺は意地悪く言葉を投げる。
「素敵な格好ですね。これまでのあなたの男たちに、この姿を見せてあげたいくらいだ」
 あからさまな嫌味にも気付かないくらい、もはや刺激の無いことが耐えられないとばかりに、自分のものを扱くその姿を、俺は冷やかに見下ろす。
 それでもまだ足りないのだと、切迫した色を湛えた瞳で俺を見上げてくる。もはや言葉にならない呻きだけを洩らし、半開きの口からは涎さえ垂らしていることにも気付けない、こちらへ大きく股を開いて見せながら、ついには自分の指でその窄まりの奥までをも犯している。
 もはや、コイツは堕ちた。これから先も、こうやってケツの穴でもイジらなければ、満足にイけもしないに違いない。
 その様子に満足して、やおら俺は踵を返した。
 部屋から立ち去ろうとして、ふいに戸口で振り返る。
 おもむろに満面の笑みを向けると、そして告げた。


「コッチ側がお望みなら、いつでもお相手いたしますよ。――ねえ、?」





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