ドリンクバーさえあれば、私たちは無限に語れるのです。

出口を探して 5

一気に大通りに走り出た。元バトミントン部の足の速さを舐めてもらっては困る。前方に、みんなでいつか行ったファミレスがあった。咄嗟にドアを開け、店員さんに「先にトイレに行く」と告げ、女子トイレに逃げ込んだ。

トイレの個室で朔さんにメッセージを送る。既読はすぐには付かない。いつもなら電話は遠慮している。けど、今は緊急時。今わたし、絶対ピンチ。

２コールで朔さんの声が鼓膜を震わせた。
「早乙女。どうした？」
「さっき、朔さんの名前を出した男に腕を掴まれて今逃げてるの」
「えっ‼︎今どこだ。そこは安全なのか？」
「北陵中近くのデニーズの女子トイレ」
「すぐ行く。そこを動くな」
性急に電話は切れた。一気に力が抜けた。私、このトイレの個室から出ても大丈夫なんだろうか……？


20分程で朔さんはファミレスに到着した。結局怖くてずっとトイレの個室にいた。
「碧、行こう」
彼は私が女子トイレから出てくるなり肩を抱いてレジ前のドアへ向かおうとした。
「でも朔さん、私トイレ借りといて何も注文してない」
「緊急時だろ！ずっとここにいるのも危険なんだよ。すみません、私こういう者でして」
警察手帳を店員さんに見せた朔さんは手早く事情を話した。店員さんの表情から事情を察したということがわかった。