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覚悟(英 act8)

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我らがボス、安藤先生の姿が見えない。瀬崎先生によると、来客があってからしばらく経っているらしい。来客か……獣医に暇な時間なんて皆無ではあるけれど、職場で長い時間話し込むのは遠慮するのが礼儀なんじゃないの?なんてね。私、ちょっと心狭くなってる?

これがストレスというものか。時緒の側にいられるのは幸せだけど。時緒の抱えているが解決する兆しは一向に見られない。一番辛いのは時緒本人だ。それは間違い無いのだけど。私のメンタルもじわじわとストレスに浸食されているのを感じていた。

「山崎先生、ちょっと」
やっと顔を出した安藤先生に時緒が呼ばれた。デスクワークの最中だった時緒は、飲みかけのコーヒーをそのままに、応接室に消えていった。その直後、ライオン舎に呼ばれた私は席を外した。処置を終えて医局に戻る最中、背の高い見慣れない男性……と言うには少し見覚えがある気のする、その人が私の目の前を通り過ぎた。

率直に、嫌な予感がした。その男性に似ている人物の顔が思い浮かんだ。梨愛ちゃんだ。梨愛ちゃんのお兄さんである早乙女朔さんは、警察官。そして、時緒が捜査の対象になっているという情報は女子会での共通認識だった。

応接室に安藤先生、時緒、そして朔さんが揃ったということは。嫌な想像しかできない。
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