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紅に染まる 7
しおりを挟む「すぐに行けなくてごめんな。悠とばったり会ってくれてて良かったよ」
張り込みの最中で、自由に動けなかった。苦々しい顔で彼はおにぎりを頬張った。
「悠さん……っていうのね、黒瀬さんって」
「ああ。黒瀬悠。クロセ製薬の社長の息子で、俺の大学の友達」
「うん。黒瀬さんから聞いた」
「そうか」
朔さんが捜査している事件って、仕事のものだけでは無いのはここ最近の彼の様子でわかる。例えば時緒さんのこととか。黒瀬さんの件も、そのうちの一つなの?それとも関連があるとか……?
「悠から、どこまで聞いた?」
昼間の黒瀬さんと同じ口調で話すから、ちょっとおかしくて笑ってしまう。
「え、何で。笑うところ?」
「だって朔さん。黒瀬さんと聞き方全く同じなんだもん」
「え……?」
「黒瀬さんにもね、朔さんからどこまで聞いているのかって聞かれたの」
「そうなんだ」
「黒瀬さんは、クロセ製薬の社内で色々あって、朔さんに相談しないといけない事態になってるって言ってた」
「あいつ……随分ざっくりだな。ん?ちょっと待て?」
少し思案した朔さんは眉間に皺を寄せた。
「ん?」
「悠と碧って、面識あったっけ?」
「無いよ?」
「じゃあなんで……悠が澄麗さんを咄嗟に助けて、碧はその場に居合わせただけだろ?」
「うん」
「悠、面識のない人にそんなに親切にするって珍しいっていうか」
解せない、とでもいうように、朔さんは首を捻った。
「澄麗はね、悠さんの奥様とお友達なんだって。披露宴も行ってたらしくて」
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