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「私……土足で踏み入れるようなこと、したかなって」
「かもね」
最後の一筋をやっと食べ終えた澄麗は、さっきとは打って変わって冷たく言い放つ。
「でも、私も英と同じように言っちゃってたと思う。好きな人が苦しんでたら、なんとかして力になりたいって思うじゃん?」
やっぱ一杯ぐらい飲もうよ、と澄麗は冷蔵庫に入れていた缶ビールを差し出した。

「時緒さん、わかってくれると思うよ。今はまだ、混乱中なだけで。やけにならずに匠のところに来たあたり、冷静さは残ってると思う」
「そう、かな……」
喉を流れるビールは、いつもと変わらず冷たくて、少し苦い。いつもと同じものがあるって、不思議と安心する。そうか、いつもと同じって安心するんだ。
「時緒が帰ってきたら、いつも通りにしてたら、いいかな?」
「うん、いつも通り、大事。話せる心境になったら話してくれるよ、きっと」
静かに微笑む澄麗の表情が、また一瞬曇った。

「英も私も──。多分ね、待つことしかできないと思う。大事な人が苦しんで、闘っていて、ジタバタしている最中ってさ。本人達が納得できるまでジタバタしてるのを見守るしかできないんだよ。見てるこっちはうずうずするんだけどね」
そう、時緒は今闘っているんだ。そして苦しい。私にできることは見守ること、安心させること、かあ……。

「難しいっす。澄麗さん」
「お医者さんの国家試験よりは簡単なんじゃないの?」
「あれは答えがわかってるから。正解がわかんないって、キツいわ」
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