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累卵の危うき(澄麗 act7)
しおりを挟む──とは言うものの。どう切り出したものか。
特段良いアイデアがある訳じゃない。悩んだ。悩んで悩んで、匠の家の最寄りのスーパーで無意識にトマトを手にしていても、まだ悩んだ。
たぶん、仲は良さそう。こないだの紅茶専門店でばったり会った時の会話からして、疎遠という訳では無さそう。その、仲の良いお兄さんが犯罪に巻き込まれているかも、だなんて話を匠があっさり受け入れてくれるだろうか?……うん、無理よね。
無理は禁物だよ、と碧に言われた。うんそうだよね。まだ付き合いたての私達にこの話題はヘビー過ぎる。でもね。私、隠し事の出来ない女なんだよね。過去に付き合っていた彼氏にはサプライズはあっさりバレるし、当時悩んでいたことも顔に出るしで、やっぱり隠し通せなかった。
でもなあ……。言われて気分の良くなる話じゃないし。うーん、どうしたものか……。って!もう匠の部屋があるマンションに着いちゃってるし。
匠の部屋のあるマンションはボタンで部屋番号を押してからインターホンを押すという、セキュリティ強めのマンションだ。私と同じ給与体系のはずなんだけどな。寧ろ私の方が先輩だから勤務年数的に私の方が給料多いはずなんだけど。家賃はきっと私のアパートの部屋より高いと思う。
ここで突っ立っていても仕方が無い。諦めて匠の部屋番号をプッシュして、インターホンを鳴らした。
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