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翻弄 6
しおりを挟む即答する九条くんを前に、沢田くんが続ける。
「如月先生、電車通勤の人だっけ。俺の車で…」
「ちょっと打ち合わせしたいことあるんで。沢田先生、先生の車の後ろついてくんで。如月先生は俺の車乗っけてくんで。如月先生、ちょっといいですか?」
「あ、うん。じゃ、沢田先生、後で」
「あ、ああ…」
大股で自席に戻る九条くんを慌てて追いかけた。
「…で、どしたの?九条先生」
「え?」
「何か話があるんでしょ?」
「ああ…」
気まずそうに目を逸らした九条くんは私の机上に目を滑らせた。
「明日、の宿題って、何出されます?」
「宿題?宿題の話ならさっき自主学習にシフトしていくからドリルの提出締切だけ教えて子ども達に任せるって話じゃ…」
「そうでしたね」
「如月先生、九条先生、俺もう出るけど」
よく通るテノールが降ってきた。
「あ、私も出ます。九条せんせ…」
「出れます。行きましょう、如月先生」
いつもながら、九条くんの後片付けは早い。九条くんの机はいつもきれいに整頓されている。ついつい雑貨を飾ってしまう私の机とはだいぶ雰囲気が違う。
職員室のドアに向かう途中、碧と目が合う。
「ラーメン食べに行くんだけど。碧も行く?」
「私、今日はいいや」
「え、珍しい」
碧もラーメン結構好きな人なのに。この私のラーメンの誘いを断るとは。
「今日、ちょっと用事があって…」
急にプライベートモードな顔で、急な小声になる碧。何かあるな。絶対何かあるな。こないだのアフタヌーンティーで吐かなかった何かが絶対ある。今度絶対吐かせよ。
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