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marble 8
しおりを挟む思わず顔を上げた。
「こうなることを予想していたかも…とか、ちょっと思った?確かに用意が良過ぎるよな」
朔さんは苦笑いと共にコーヒーを飲み干した。彼が淹れてくれたコーヒーは濃いめで、寝ぼけた脳には丁度良い。
「お、見通し…ですね」
「伊達に取り調べしょっちゅうやってないからね」
朝陽に照らされた朔さんの笑顔から覗く白い歯が眩しい。
「私、取り調べされてるんですか?」
「お望みならしてみてもいいけど」
「カツ丼出ます?」
「二日酔いの胃に受け付けられるならな」
顔を見合わせてクスクス笑う。平和なのか平和じゃないんだか、よく分からない会話だと思う。
「でも朔さん」
「ん?」
「私、今日泊めてもらって問題ありませんでしたか?」
「どういうこと?」
「その…彼女さんの逆鱗に触れるとか」
「お怒りになってくれる彼女はいないから、そこは大丈夫」
「えっと…今お出掛けになられて不在とか、ですか」
「そもそも彼女がいないってこと」
目を逸らして若干不機嫌になった朔さんのその表情はちょっと可愛い。
「この仕事してるとさ、急な呼び出しが多くて愛想尽かされちゃうんだよ。決して俺がモテないと言うわけでは」
「朔さん、十分かっこいいですって」
「そんなリップサービスに舞い上がれる歳でもないんだよな」
「もう、本当ですって」
「じゃあ付き合う?」
「つ、付き、合う…?」
「ほらやっぱりリップサービスだろ。梨愛の友達なんだ、気を遣わなくてもいいんだよ」
この人…私がイエスと言ったらどうするつもりだったんだろう…?
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