ドリンクバーさえあれば、私たちは無限に語れるのです。

藍沢咲良

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La petite Robe noire[ラ・プティート・ローブ・ノワール] 2

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「私は1人で優雅に晩酌したいの。この夜景を肴に。考え事もしたいし」
「え、梨愛でも悩みがあんの?」
今私ため息混じりでゆったりと告げたばっかなんですけど。何その間髪入れずに突っ込んでくる感じ。

「大人なんだから悩みの1つや2つぐらいあるもんでしょ」
「待って、俺ビール取ってくる」
何で満紘がビール取ってくるのを待たなきゃいけないのよ。口から出かけた言葉を発する前に満紘は部屋の中へ消えていった。また今日も満紘と晩酌する羽目になりそう。

「お待たせ!」
「いや待ってないし」
「え、梨愛ってそんないじらしい事言う女だった?」
「いじらしいってどういう事よ?」
「俺が待たせたのに待ってないとか。俺ちょっとキュンときちゃったよ」
わざとらしく胸に手を当て演技かかったこの口調を、満紘の会社の女子は知っているのだろうか?
「だから私は満紘と晩酌するつもりは」
「俺の梨愛にかんぱーい」
「何その俺の梨愛って」
反射的に缶チューハイを満紘の缶ビールにぶつけた。カツンと鈍い音がした。

「仕事終わりはビールだよな」
「一丁前に言うなあ。私にはビールの美味しさはわかんないけど」
「それは梨愛の味覚がお子様だからだろ」
「一生わかんなくても構わんし」
「じゃあ俺一生梨愛とビールの美味しさを分かち合えないのか」
しょぼんとする満紘を目の前に苦笑いが漏れる。そもそも一生分かち合えないとか。大袈裟だし。てか何よその『一生』って。子どもか。
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