ドリンクバーさえあれば、私たちは無限に語れるのです。

藍沢咲良

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若葉 8

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私の食べたいもの…。正直すぐには思いつかないんだけど。
「お好み焼き、とか、どう?」
「いいですね。お好み焼き、行きましょう」
目を細めて機嫌良く歩く彼の歩調が速くなった。
「え、待って。九条くん、速いよ」
「腹減ってるんで。早く行きましょう」
一瞬こちらを振り向いて目を細めた彼の手は、私の手首を掴んでいた。引っ張られるように校舎裏の駐車場に連れて行かれる。


「──九条くん?」
「今、声掛けないでください」
真剣な表情の九条くん。見つめる先には、今まさにひっくり返されようとしているお好み焼き。フライ返しを両手に持ち、お好み焼きと鉄板の間に入れてから、もう1分以上が過ぎている。

「ねえ、九条くん、もしかして…」
私が言いかけると同時にお好み焼きをひっくり返…せたのは、その面積の半分で。残りの半分はもんじゃ焼きのようになってしまった。
「ねえ、言っていい?」
笑いを堪えて次の言葉を言おうとして遮られる。
「不器用、って言いたいんでしょう?」
「うん」
堪えきれずくすくすと笑いが漏れてしまう。普段ポーカーフェイスの九条くんが不器用…。こんな素敵な情報、明日の朝一番に稲垣先生に報告すること、もう決定だな。

フライ返しを1つ手に取り、もんじゃ焼き状態のお好み焼きを、お好み焼きの姿に辛うじて整えた。
「…胃の中入れば一緒ですよ。美味しければ、いいんです」
「九条くん、調理実習でも同じこと言うの?」
「言わないですよ。自分、料理上手っていうテイで進める予定なんで」
「それ即子どもにバレるやつじゃん」
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