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Animal rhapsody 7

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動物園の中には職員用の浴場がある。園内動物の持つ菌を園外に持ち込まないようにする為だ。獣医だけではなく、他の職員も入る。1日の終わりにお気に入りのシャンプー等の香りに包まれるのは、結構好きだ。入浴後に地下鉄に乗って帰るというミッションが無ければ、だけど。

仕事帰りの地下鉄南山線は混雑している。念入りに髪を乾かしておかないと何かを勘違いした輩が寄ってきてしまう。電車の中は問題無い。女性専用車両を選べばいいだけ。問題は、乗り換えの通路を歩いているときだ。特に金曜日は酔っ払いが絡んでくることがある。乾きたての髪の匂いは余計な苦労を増やすらしい。

「山吹」
「山崎先生。お疲れさま」
「お前、地下鉄?」
「うん。山崎先生は車だっけ?」
「勤務時間外まで先生呼びすんなよ」
じゃあ何と呼べと…?『時緒』と名前で呼ぶ勇気はとうの昔についえた。

「山崎…?」
「名前じゃねえのかよ」
目を逸らして小さく呟く声は聞こえなかった。
「え、今なんて」
「何でもない。髪乾いてなくないか?」
時緒の指が髪にそっと触れた。意外過ぎる行動に身を硬くする。

「今日は時間がギリギリだったから」
挙動不審に一瞬なってしまったの、気付かれてないよね?動揺させられているのに、当の本人は飄々としているのが悔しい。
「電車で変なやつに絡まれるんじゃね?」
「女性専用車両があるから大丈夫」
「大丈夫じゃねえだろ。乗ってけよ」
「乗るって…何に?」
「俺の車」
「送ってくれるの?珍しい」
「乗るの?乗らないの?」
「乗らせていただきます」
じゃあこっち、とぶっきらぼうに手首を掴まれる。驚き過ぎて声が出ない。駐車場に辿り着くまで、掴まれた手首はそのままだった。
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