ドリンクバーさえあれば、私たちは無限に語れるのです。

藍沢咲良

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桜の頃(澄麗 act1)

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校門の桜の木はもう既に満開間近だ。毎年4月の初めに満開になってしまうのに、それでも毎年入学式まで桜の風景が保たれている。これはどこの地域でも同じなのだろうか?学校七不思議の一つに入れてもいい項目だと思う。

水無瀬市の中でも有名な商店街に程近い栄小学校が私の初任校だった。そこに別れを告げ、次なる私の舞台。水無瀬市立富士見小学校。無事に異動の挨拶も物品の引越も終え、一瞬落ち着いた。しかし入学式も始業式もあっという間にやってくる。毎年のことなんだけど、息つく暇も無いというのが私達、教師の世界だ。

「如月先生、九条先生、お昼行くよ?」
学年主任の稲垣先生がお財布を小さな鞄に入れながら私たちに声を掛ける。私の向かいの席に座る九条くんはパソコンを閉じて静かに立ち上がった。稲垣先生と同様、私もランチ用に小さな鞄を常備している。でも通勤に使っている赤いショルダーバッグはそのままランチに行っても良さそうな小ぶりのものだから、バッグはそのままで出掛けることにした。

稲垣先生の黒いノアに乗り込む。助手席には私が、九条くんは後部座席に座った。稲垣先生率いる5年チームは1組が稲垣先生、2組が九条先生、3組が私だ。稲垣先生は大学生のお嬢さんと高校生の息子さんがいらっしゃるお母さんで、九条くんは2年目の若手男子だ。稲垣先生は昨年度4年だったので持ち上がりで、九条くんは2年の担任だったそうだ。
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