232 / 244
15.
しおりを挟む──何だろう、この地獄絵図は。
花嫁であるところの紗香は、スタッフに囲まれて、ウェディングドレスにファーのケープを身に付けていた。新郎新婦のいる箇所にはストーブが集中している。
対して、参列者のいる場所は。沢山の人がいるのですが。車椅子のおばあちゃんも、小さな子どももいらっしゃるのですが。
ストーブはそれぞれの角に1箇所ずつ。……あのおばあちゃん、顔色悪くないか?その隣の小さな男の子は寒さのあまりくしゃみが止まらず、愚図り尽くしていた。姿が見えないということは、母親らしき方と共に別室に行ったようだ。
参列者の全員が薄着だった。それもそのはず。参列者の恐らく全員が、受付隣のクロークでコートを預けていたのだから。
今日の予想最低気温、マイナスいってたような。そうか。今私は、その極寒の中、ほぼノースリーブのドレスでいるのね。自分がこんなに寒さに強いとは初めて知ったかも。
杏果が怒りで震えているのを真横で感じていた。でも言及するのはやめた。相槌を打ったら最後、杏果のお怒りの言葉が止まらなくなる気がした。
あのおばあちゃんが倒れませんように。私の左側にいる舞が体調を崩しませんように。
──あれ?これ、結婚式だよね?
お幸せに、とか言うタイミングで、私は何故参列者の健康を気にしてヒヤヒヤしないといけないのだろうか?
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
21
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる