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7.
しおりを挟む──激動の、一年だった。
元彼と別れて飲んだくれていた私に、声を掛けてくれた怜。怜と出会ってから、私の人生の動きは、ものすごいスピードで加速した。
去年の大晦日には、その一年後、結婚して妊娠して、穏やかに旦那様と年越しをしているだなんて、思いもしなかった。人生って何があるか、本当にわからない。
日々膨らみつつある私のお腹。来年の暖かい時期には、この子が出てくる。最近はお腹を蹴るようになった。でも怜が話しかけたりお腹を手で触れる時には大人しくなってしまうから、この子は男の子かもしれない。怜が意識しているタイミングではお腹を蹴ってくれないので、その度に彼はしゅんとしている。
「唯。年越しそば出来たよ」
スーパーで売ってた、お湯を入れるタイプのお蕎麦を怜が作ってくれていた。
「あ、今蹴ったよ」
「……でも俺が行くと蹴らないんだろ?」
若干拗ねつつも、私のお腹に手を当てる。
「「……!!」」
「怜!今、蹴ったよ!」
「ああ……ドンっていうか、ポンっていうか……」
「やっとパパにも蹴ってくれたね」
「ああ……パパだよー。もっかい蹴って!」
「「…………」」
「……蹴らないね」
「調子に乗るなってことか。産まれたら絶対コチョコチョしてやる」
「ねえ、お蕎麦、食べよう?伸びちゃう」
「そうだな」
テレビから流れる紅白歌合戦は、もう後半だ。
「ねえ怜」
「ん?」
「次の年越しは、この子も一緒なんだね」
「そうだな。もう一人増えてるかもな」
「えっ⁉︎」
不敵に笑う怜に、私はつわりの日々を思い出して困惑した表情をお見舞いした。
私たちの幸せは、こうやって毎日塗り重ねられていく──。
fin.
Copyright(C)2024-藍沢咲良
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