210 / 244
Epilogue 〜幸せの、その向こう〜
しおりを挟むあの結婚式から半年後。現在私はつわりの真っ最中だ。ハネムーンベビーとやらが私のお腹に来てくれたらしい。
日中は車酔いのような気持ち悪さがずっと、ずっと、ずうーーーっと、ある。それでも仕事中は気を張っているから、何とかなっている。
問題は、怜が帰ってきてからだ。
「──ただいま」
「おかえり。……ごめん、ちょっと……」
「大丈夫か?」
「大丈夫じゃない」
つわりの最中の妊婦に向かって大丈夫?って聞くの、あんまりよくないということを、身を持って知った。「大丈夫?」と問われて「大丈夫です」だなんて決して言えないもの。
そして、大丈夫じゃない最大の原因。それは多分、怜だ。以前からスパダリっぷりを発揮しまくっていた怜は、妊娠した私を以前にも増して大事にしてくれている。それはわかってる。わかっているのだけど。
私、怜の顔を見ると気が抜けるのか、何故かつわりがひどくなる。怜に直接「怜が帰ってくると気持ち悪くなる」と正直に告げた時の悲しそうな顔はこの世の終わりを表していた。すぐフォローしたんだけど、もう彼の耳には届いていなかった。
それでも怜はご飯の匂いを嗅いだだけで貧血を起こす私の為に、スーパーで夕食を買ってから帰ってきてくれる。ありがたいことだ。ありがたいんだけどね。けどね。何故この人は油物のおかずばっかり買ってくるのでしょうか⁉︎あっさりとした煮物が恋しい……。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
21
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる