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3.
しおりを挟む「かすみん、未だに綾瀬くんのこと、綾瀬くんって呼んでるんだって。名前じゃなくて」
「……あいつ、引きずってるからな」
ええーっ‼︎爆弾発言。綾瀬くん、かすみんじゃない誰かを引きずってんのね?目を丸くした私の顔を見た怜はしまった、という顔をした。
「あんまり口外しない方がいいやつね」
「ああ。だいぶプライベートな話だからな」
「かすみんですら知らないかもな話だもんね。うん、やめとくわ」
「そうしてくれると助かる」
「聞くと言いたくなっちゃうからね。お味噌汁、まだあるけど飲む?」
静かにお椀を私に差し出した怜は、安堵の表情をしていた。
「──もしかして、綾瀬くんはそのお相手にくん付けされてたとか?」
「聞いてんじゃん」
怜は苦笑いしながら、おかわりしたお味噌汁のお椀を受け取った。
「ごめん。でも気になって」
「どうだろうな。その彼女がくん付けしていたから佳純さんにも呼んで欲しいか。それとも、その彼女とは違う呼び方を好んでいるか」
「難しいのね」
「案外な」
「男の人って、もっと単純だと思ってた」
「単純?」
言わない方が良かったか。だって怜は、私が狙ってやったことは悉くいい反応をしてくれるんだもの。
「何でもない」
「唯」
「ん?」
「後で一緒に風呂、入ろうな」
ここしばらく怜の帰宅が遅かったから、一緒に入浴するって、北海道の温泉以来だ。
「お風呂?いいけど。久しぶりだね」
覚悟しとけよ、と小さく低い声で呟いた彼は、お味噌汁のお椀に再び口をつけた。
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