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4.
しおりを挟む怜とは初めて旅行するけれど。旅慣れているのがよくわかる。空港の頭上の表示に頼らなくてもスムーズに手続きを進めるあたり、この空港はきっと彼の庭だ。
「あれ?ビール飲まないの?」
「向こう着いたら車運転するからな」
「車?」
「北海道はレンタカー無いとしんどいんだよ」
「そうなんだ。私、北海道行くの初めてだから、電車で何とかなるものかと」
「初めて?」
「うん。沖縄なら行ったことあるんだけど。大学の卒業旅行で」
卒業旅行といえば海外だろうと勝手に思っていた当時。映美が「どうしても日本を出たくない」と言い張るのでせめて海外っぽい沖縄を卒業旅行の行き先に選んでいた。
「そうか……唯の初めてを貰えるのか」
「初めてって……大袈裟な。これから先、いくらでも初めてが出てくると思うよ?」
あー……またこの人、違う世界に行ってるわ。口元が思いっきり緩んでいる。そんなに喜んでくれるなんて、私の方がいっそ嬉しいのだけど。
ラウンジを出て、搭乗手続きを順調に……しているはずが。
「──え?怜?」
金属探知機のゲートを通り、スタスタと歩いていた。が、いつも真横にいるはずの怜がいつまで経っても来ない。
振り返ると、彼は差し出されたカゴにベルトを置いていた。
「え、ちょ……」
笑ってはいけない。でもごめんね怜。私、笑っちゃう。だって無双イケメンの怜が空港の金属探知機に引っかかってベルトをカゴに置いてるんだもの。ここは笑ってあげるところでしょ?
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