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8.
しおりを挟む「おかえり」
この、嬉しそうな微笑み。怜の顔を見ただけで、今日の全てが浄化されそう。
「ただいま」
言うと同時に、彼の胸に顔を埋めた。このまましばらく、抱きついていたい。
あー……落ち着く。怜の体温が気持ちいい。服越しだけど、それでも怜を感じられる。このままずっとくっついてれば、紗香から落とされた特大爆弾ストレスが消えるかな?
「──疲れた?」
「……疲れたかも」
「なあ唯」
「んー?」
彼の呼びかけに応えてから、少し間があった。どうしたんだろう?怜、何かあったかな?
「怜?どした?」
「唯さ……」
口にするのを躊躇っているみたい。何か、話しづらい事柄でも発生したのかな。
「女子会行くと、いつも疲れて帰ってくるな」
「え……?」
顔を上げると、心配そうな表情をした怜と目が合った。
「佳純さんや映美さんと飲みに行った帰りはいつも唯元気なんだよ。でも、女子会から帰ってくると、いっつも疲れた顔して俺にくっついてくる」
そうだろうな。かすみんと映美と飲んで疲れたことなんて無い。大人になってから出来た友達って常識人しかいない。ややこしい所を感じた人とは上手く距離を取ってフェイドアウトしていた。
「そう、かもね」
いつまでもここで怜にくっついているわけにいかない。身体を離し、手を繋いで歩き始めた。
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