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6.
しおりを挟む「でもさー、私、別れたんだよ?水無瀬駅から一本で行ける家に住んでて、土日祝日休みの人じゃないと私嫌なんだよね。私より背が高くないと嫌だし」
なんと!完全スルー!紗香はこの国の言語を理解出来ないらしい。
見事な完全スルーに舞と杏果が更に固まった。石化通り越してコンクリート固めってところだろうか。
「……う、うん……」
絞り出すように相槌を打ったのは杏果だ。このメンバーで一番の紗香のサンドバッグであるからか、こちらの世界に戻ってこられるのは舞よりも早かった。
「私、いつも会いに行ってあげてたのに。交通費使ってさ。おかずも持っていってあげたのに」
え?おかず……?いや全力で私へのディスりに対する私の怒りをスルーした紗香に相槌なんか打ちたくないんだけど。自分に究極に甘いこの紗香がおかずを持っていっていたとは。料理をしたってこと?実家住みだからお母さんに教えてもらったんだろうか。
「作ってあげてたんだ」
辛うじてこちらの世界に戻ってきた舞が微笑みを作った。あ、いかん。これ、紗香の独壇場の始まる合図だ。
「ううん、成城石井のやつ。あれ、高かったのに。私、結婚するつもりだったんだよっ……!」
あー……始まった。お店の中だろうが外だろうが、所構わず泣き始める紗香劇場。今夜も開幕ですな。
舞が私に申し訳無さそうに口パクで「ごめん」と言ったのがわかった。うん、わかってる。舞は悪くない。
今日は私の幸せな話で盛り上がろうとしていたところへの紗香劇場の開幕。これを止められる人はね、多分この世界のどこにもいない。
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