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3.
しおりを挟む右手の指先で、布越しに彼自身を確かめた。
「怜……?」
「な、何?」
「怜だって、もう……」
「もう、何?」
余裕があるのは、誘惑しているのは、私だったはずなのに。怜はたまに、私に恥ずかしい言葉を言わせては喜んでいる。
「か、硬く……なってる、じゃない」
「硬いって、何が?」
「い、言わ、ない」
暗い部屋の中ならともかく。ここはマンションの駐車場の車の中だ。外はまだ明るいし、外から車の中がよく見えてしまう。そんなところでそんな言葉、言えない。
「言わないと、触ってやんないよ?」
ああもう、あっさりと形勢逆転。私はこの人に、こういうときに勝てた試しが無い。勝たなくていいのかもしれないけど。そもそも勝つ必要性って何だ?
「はず、かしい、から……ねえ、お願い……?」
上目遣いをすると、彼の硬度が増した。
「部屋、行こうか」
車から降りた怜に、いつもより強めに腕を引かれた。
「もう、触っていい?」
「まだエレベーターも来てないじゃない」
エレベーターに他の住人が乗ってませんように。こんなに身体をくっついたところを見られるなんて。お互いに気まずいじゃない。
ポーン……と無機質な音が鼓膜を響かせた。エレベーターには誰も乗っていない。ボタンを押すと、力強い腕に閉じ込められた。さっきよりも、強い口づけ。このまま私、怜に捕食されるんじゃないかという勢いで強く吸われた。怜の腕で支えてくれていないと、もう私、立っていられない。
部屋に着いた。私の後に続いて入った怜に、私の身体は壁に縫い付けられた。
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