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6.
しおりを挟む「手土産、これでいいかな?」
「無くていいって言ったのに。律儀だな」
「手土産無しで行くわけにいかないでしょ?」
「──俺、唯の実家行ったとき、手土産忘れてた」
「そういえば」
しまった。怜が持ってくる手土産なんて、すっかり頭から抜けていた。
「でも、上手くいったからいいじゃない」
「娘をくれって言ってる男が手土産も持ってこないとか。印象悪過ぎだろ」
しまった。怜のしょんぼりモードは、一度入ると長いんだった。
「お父さん、怜のこと気に入ったみたいだよ?」
「──ほんとに?」
「本当」
「そうかなあ……」
ああもう。今日は怜のしょんぼりに付き合ってる場合じゃないんだけど。何か特効薬は……?
「お母さんがね、教えてくれたの。私達が帰った後、お父さんずっと機嫌良かったって」
嘘ではない。母から実際にそういった内容のLINEが来ていた。
「そっか……。じゃあ、大丈夫か」
「そう。大丈夫。ねぇ怜。今大丈夫じゃないのは私だよ?」
「何で?」
世にも不思議なことを私が言っているかのように、怜は怪訝そうな顔をした。
「未来の旦那様の実家に行く嫁候補生なんだよ、私」
「嫁候補生……」
「そう。怜の御両親のお眼鏡に適うかどうか、勝負の時なんだよ?」
「嫁……いいな」
口角が上がっただけでなく、口まで開き出した。
「怜?」
「嫁か……。ついに、俺は唯を嫁に……」
「りょーおー?」
駄目だー……。今日は私、自力で戦うしか無いみたい。
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