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5.
しおりを挟む私の実家を出るときまでは、怜はずっとにこやかに振る舞っていた。でも、実家を出て最初の角を曲がった辺りから無言になった。
「──怜?」
「ちょっとそこ、停めるわ」
コンビニの駐車場に入ってシフトレバーをパーキングに入れると、彼はハンドルに突っ伏した。
「え、怜、大丈夫⁈」
「き……」
「き?」
「緊張した……」
緊張?そりゃ確かに挨拶する前はガッチガチだったし、お父さんと打ち解ける前は隣にいる私にまで緊張が伝わっていたけど。お父さんと乾杯してからは、いつもの怜に見えた。むしろ怜のペースになっているんじゃないかって思えたぐらい。
「頑張ってくれて、ありがとね」
「──唯」
「ん?」
怜は起き上がると、私の胸に顔を埋めるように抱きついてきた。
「え?怜?」
「充電させて」
充電って。日が暮れたとはいえ、コンビニの灯りでこの車の中の様子は道行く人から見えてしまうんだけどな。地元の知り合いに目撃されたら絶対イジられる。
怜の髪をそっと撫でる。怜の髪はふわふわして柔らかい。何度か撫でていると、顔を上げた怜と目が合った。そのまま唇を重ねた。
「婚姻届、取りに行く?」
「だから」
「お父さんは許可くれたよ?」
「怜、まずは一緒に暮らすのが先でしょ?それに、私も怜の御両親に挨拶しないと」
「行ってくれるの?」
「当たり前じゃん」
挨拶も無しに入籍するとか。嫁として印象悪過ぎでしょ。
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