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5.
しおりを挟む「私だって、怜と一緒に暮らしたいよ!」
「だったら」
彼の顔が華やいだ。それとは対照的に、目頭が熱くなった。
「でも、一緒に暮らして、今まで見えてなかった私の何かに失望されちゃうかもしれない」
「失望なんて……。俺が唯に失望するわけないだろ?」
怜は破顔したまま、私に言い放った。
「すると思うよ。私、本当は……部屋の片付け、苦手なの」
「唯の部屋、いつも部屋綺麗だろ?」
「それは怜が来るってわかってるから片付けてるだけ。普段は違うの。怜は私を美化し過ぎてる」
美化してくれるのは嬉しい。でも、私にだってだらしないところはある。たぶん沢山。
彼の中でどういうわけか、私に対してどんどん加点しているのは何となく感じていた。私は、そこからの減点が物凄く怖い。
「じゃあ言うけど。俺、料理苦手だよ?」
「知ってる」
私が初めてこの部屋に来た時の冷蔵庫内の食料の少なさ、調味料の少なさ、キッチンの綺麗さがそれを物語っていた。
「でも俺、片付けは結構好き。綺麗になってくのを見るのが好きなんだ」
ニッと口角を上げた怜の顔越しに見える部屋は、やっぱりいつも綺麗。
怜が来ていない日の私の部屋との違いに、また引け目を感じた。
「片付けが好きな人にとっては、散らかった部屋は堪え難いでしょ……?」
駄目だ。私も一緒に暮らしたいのに。一緒に暮らせない理由ばかりが私の口をついて出る。
「あのなあ唯。俺ら、得意なものと苦手なものがそれぞれ違うだろ?」
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