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8.
しおりを挟む「誓約書なんて俺は同意してない。帰ればいいんじゃねえのかよ」
「どうも貴方が信用出来ませんので。お嫌なら、やはり警察を」
「……わかったよ。早く済ませてくれよ。どうせただの紙切れだろ?」
「誓約書はちゃんと法的拘束力がありますよ?私、行政書士ですので、書面は作り慣れております。その点はご安心ください」
有無を言わさぬ、にこやかな、でも笑わない目。普段怜が私に見せる表情とは全く違う。
これが仕事用なのか。警戒する相手に向けるものなのか。どちらにしろ、この人の、私の知らない面を初めて見たのは間違いない。
健二はもっと抵抗すると思っていた。でも違った。ストーカーは第三者……特に警察が介入すると勢いが弱まるって聞いたことがある。そこへ法律に強い行政書士が登場した。それも屈強な警備員付きで。
仕事をクビになって私に寄生しようと試みていた健二には、かなりのダメージだったのかもしれない。そこへ誓約書だ。とどめの一撃以外の何物でも無い。
「──綾瀬?俺。今朝話してたやつ、──ああ。部屋押さえといて。あと5分ぐらいで行くから」
怜はこうなることを予想していたのか。私は通常の仕事をこなすのに精一杯で、そこまで考えが及ばなかった。
怜って、こんなに冷静な人だったんだ。
電話を終えた怜は私達に微笑みを向けた。
「──行きましょうか」
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