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6.
しおりを挟む「クビになったとか?横領でもした?」
「し、してねぇよ!取引先の女に手ぇ出しただけだし!」
「へえー、あれ、取引先の人だったんだ。で?その人にも振られたんだー?」
「唯、そこまで」
頭上から聞き慣れた静かな声が降ってきた。と同時に、力強い腕に包まれた。見上げると、怜の冷静で真剣な表情。
「え、怜?何で?仕事は?」
「外出先から帰って来たとこ。ちょっと2人とも、そっちに寄って。邪魔になってる」
怜が顎で示した方向の壁際に、私達は寄った。まだ人の往来が少ない時間だったのが救いだった。でもきっと邪魔になってた。反省。
「私の妻に、何か用でしょうか?」
「妻……?え、唯、結婚……?」
いやいや私ら、まだ結婚話ちゃんとしてないぞ?でもここは、話を合わせておいた方がいいかも。
「そう」
目を泳がせて何かブツブツ言い出した健二に、怜は冷たく言い放った。
「昨日も妻に付き纏っていたとか。私達、もう既に警察に貴方のことを相談させて頂いているのです。まだしつこくされる予定があるなら警察署までご一緒しますが」
「は?警察?……んな訳ねえだろ!誰がこんな女に」
「私の妻をこんな女呼ばわりされるとは心外ですね。やはり今すぐに警察を」
「ち、ちげえし!昨日も今日も偶然会っただけ!おい唯、もう俺にしつこく構うなよ!」
怜の前ですが。職場のビルの1階ですが。キレていいかな?
私がキレる気配を察した怜が、私の肩を抱く手のひらに力を加えた。耐えろ、ここは職場の近くだ、とでも言うかのように。
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