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対峙
しおりを挟む「──では、一色さん。入りますよ」
私が鍵をドアノブに挿すと、カチャ、と無機質な音がした。鍵は掛けてあったらしい。
2人の警察官を先頭に、部屋へ入る。怜と私も、それに続いた。
「……いませんね。気配も感じませんが」
「電気も換気扇も点いていた。ベッドの下は?」
「いませんね。クローゼットも隠れるスペースは無いようです」
クローゼットに服がぎっしり入っているのを見られるのは恥ずかしい。けど、安全には換えられない。
「──となると、ベランダ。鍵は掛かってますね」
「いませんね」
「外に逃げた可能性は」
「鍵掛かってましたからね。一色さん」
警察官が振り向き、私と向き合う。
「今朝、電気を消した記憶はありますか?換気扇を消した記憶も」
あれ……?無い、かも……?
「無、い……です」
「鍋のカレーは作られてから半日以上経っているように見受けられます。ということは」
「現時点で、侵入があったとは考えにくいですね」
「そう、ですか……」
恥ずかし過ぎる。健二が部屋に侵入したと思って警察呼んで。ただ私が換気扇と電気を消し忘れていただけだなんて。
「しかし、今日会社にはその彼は来ている。そして彼は、この部屋の鍵をかつて持っていた。警戒は、続けた方が良いでしょうね」
警戒……。警戒って、どうすれば……。
「そちらの方と、よく相談された方が良いですね。可能なら引越をお勧めしますが。一色さんの安全について、貴方にお任せ出来ますか?」
「はい、勿論」
怜の迷いの無い言葉が、怯え切った心に響いた。
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