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6.
しおりを挟む「着替えはあるけど。でも職場で着るには」
「じゃあ、一緒に取りに行こう。もしその彼が家にいたら危険だ。嫌かもしれないが、警察に相談するよ?」
「でも……」
「でも?」
「今日はもう遅いし。怜だって疲れてるでしょ?手を煩わせるのは」
「唯!」
今度は怖い顔をして私の瞳を覗き込んだ。
「好きな女の身の安全の確保をするぐらいの体力ぐらい持ち合わせてるよ。俺の愛情、舐めないで?」
な?と口角を上げた彼に、私はもう、甘えるという選択肢しか残されていなかった。
本当は、怜に健二とのことは知られたくなかった。
健二と付き合い始めた頃、健二はとても親切で、私を一途に想ってくれているように思えた。最初の半年……いや、3ヶ月ぐらいは順調だった。お互いに慣れてきた頃、違和感があった。
彼の友達に対する上から発言。私が代金を支払うことに対する抵抗の無さ。私と友達が一緒に写った画像を見た時の、品定めするような、デリカシーの無さ。極め付けは、私の500円玉貯金を少しずつ盗んでいたことだった。
500円玉について私が気づいたとき、すぐには自分の関与を否定していた。でも状況証拠が完璧過ぎた。
その当時、私の家に出入りしていたのは健二だけだった。私が「警察呼ぶ」と言ってもまだシラを切っていた。健二が盗ったこと前提に話を進めていたら「そりゃ盗ったけど」と口を滑らせた。
次第に私は健二に対して冷めていった。でも、手癖の悪さと上から目線、デリカシーの無さと金払いの悪さ以外は問題無いと思っていた。何より、今から新しい人を探す方が大変だと諦めていた。
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