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5.
しおりを挟むふわりと腕に包まれた。
「大丈夫。大丈夫だから。──怖かったよな」
「……ん」
「ずっとここにいる訳にはいかない。歩ける?」
「ん……大丈夫」
身体を離して私の顔を覗き込む彼は、ふっと笑った。
「大丈夫じゃないだろ。家まで、送るよ」
家か……。まさかと思うけど。
健二と付き合っていた当時、健二に我が家の合鍵を渡していた。その合鍵は返してもらったけれど。でももし、健二が合鍵の、更に合鍵を作っていたとしたら……?
脚がなかなか動かない私を不審に思ったのか。怜の表情が真剣で険しいものに変わる。
「唯、もしかして……家に押しかけられたことがあるのか……?」
「まだ、家には。別れてから彼が家に来たことは無いんだけど。でも」
「でも?」
「付き合ってた当時、合鍵を要求されて、お互いの家の鍵を持っていたの。まさかと思うけど」
怜の表情が険しいまま眉間がピクッと動いた気がした。でも気にする余裕の無い私は言葉を続けた。
「合鍵の合鍵を作られていたら、私の家って安全じゃないのかなって……」
目を見開いた怜の表情が、更に険しくなった。
「普通はしないと思うんだけど。でも現に、ここで待ち伏せされたなら、家の前か家の中にいる可能性も」
「あるかもしれないな。……唯、今日はひとまず、俺ん家に帰ろう。俺の家に着替え、あっただろ?」
怜の家に置かせてもらっている服を脳内に浮かべる。通勤時に着ても問題……あるかも。職場で着るには向いていない服だ。
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