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4.
しおりを挟む血相を変えた怜がクロセ製薬のフロアの入り口に到着したのは、かすみんが電話を終えてから10分程経ってからだった。
「唯!無事か⁈」
「怜……」
エレベーターは使わず、階段で降りてきたと思われる彼は息を切らして私の両肩を両手で掴んだ。
そっか……。元彼に、健二に付き纏われてるって知られちゃったのか。何か、言わなきゃ……。頭が、脳が、動かない。言葉が、浮かんでこない……。
身体も頭も、強張ったまま。きっと顔も強張ったままだ。表情が上手く作れなくなっている自覚がある。
「佳純さん。連絡、ありがとう。……何があったか教えてくれますか?」
「元彼さんにビルの入り口で待ち伏せされていたようです。私、唯先輩より後に退勤してたからちょうど遭遇しまして。強引に連れて行かれそうな感じがしたので、ここまで戻って来ました」
「ありがとう。感謝してもしきれない。あとは任せて貰えるかな?」
「はい。綾瀬くん、私達は帰ろうか」
いつの間にいたのか、綾瀬くんが怜のすぐ後ろから顔を出した。
「──唯」
身体がビクッと反応するだけ。顔を上げて怜の顔を見る勇気が無い。
幻滅、したよね。元彼に付き纏われて、はっきりと拒絶も出来ずにただ固まってるだけの私なんて。怜に釣り合わない。
一歩、怜が私に近づいた。私はまだ、斜め下の床を見つめるしかできない。
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