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8.
しおりを挟む不意に、怜が身体を離した。
「ちょっと待ってて。もう無理」
勢いよく浴室を出た怜を、蕩けた脳のまま、壁にもたれて呆然と見送っていた。湯気の立つ浴室に1人残されて戸惑っていると、再び怜が浴室に入った。
「──取ってきたの?」
「付けずに挿入れるわけにはいかない。でも我慢するのも、もう無理」
手早く装着した怜は壁に手をつくよう、私を導くように手を取った。間髪入れずに激しい快感に襲われる。ああ、これだ。ずっと欲しくて、渇望していた快感に、脳が蕩けたままの私はヒップを突き出したままうっとりとしていた。
だらしない声が、止めどなく浴室に響く。だめ。真夜中なの。聞こえちゃうの。でもこの声、我慢出来ない。虫の息ぐらいしか残っていない理性を総動員して、喉奥から漏れる声を出来るだけ抑えた。
『久しぶり。俺、唯の部屋に忘れ物があるんだけど』
ブロックしたはずなのに。迂闊だった。LINEはブロックしたからもう大丈夫だと思っていた私は甘かったのか。SMSで来るとは……。
どうしたものかと思いあぐねていた。
「唯?どうした?」
情事を終えた私達は今度こそゆっくり寝ようと準備していた。スマホの充電を確認した私がいけなかった?それとも通知の表示をうっかりタップしたのがいけなかった?
見なかったことにしよう。健二の物なんて、とうの昔に全てゴミの日に出していた。忘れ物があると言われても、無いものは無い。連絡取ること自体ご遠慮願いたい。一刻も早く画面を閉じて怜のところへ……と振り向いて笑顔を作った。
「何でもない。寝よう?」
怜の顔が一瞬強張っているのように見えたのは気のせいだと思いたい。って無理よね。でも今は2人仲良く、ゆっくり眠りたいの。
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