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3.
しおりを挟む「怜……私、ゆっくり好きになっていったら、ダメかな?」
「……俺、重いかな」
悲しそうな顔しないで。無理して笑わないで。
重い、わけではない。むしろ嬉しい。でも、怜が私に想ってくれてるのと同等のものを私が抱いているとは、まだ思えない。
「重いんじゃないの。怜が私を想ってくれてるのは嬉しいの。私ね……」
言って、いいかな。言ったら私が心を許していないことがバレてしまう。でもここを超えないと、怜の私に対する不安って消えないかもしれない。
「私、ね。前の人に……二股かけられてたの」
一気に険しい表情をしてくれてるけど。でも私は健二に対して怒ってほしいわけじゃない。
「二股かけられて、束縛も結構されてたんだけどね。だから、その……。男の人にはどうしても警戒心を持つようになっちゃって。心の開き方っていうか、心の許し方っていうか。忘れちゃったみたい」
「唯……」
力無く笑う私の目を見つめる怜の表情からは、険しさはまだ消えない。でも、がっかりさせたわけではないか。いや、がっかりさせたかもしれない。私が、二股かけられるような女だっていう事実を、怜に知らせてしまったのだから。
「ふふ、がっかりした?」
「え。がっかりって」
「私が二股かけられるような女だったってこと。怜は私を、美化し過ぎなんだと思うよ」
「そんなこと言うな」
優しい、長い長い口付け。何度も重ねて、合間に少し、息が吸えた。
「もう、そんな思いはさせない」
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