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お椀にお粥を盛ったはいいけど、レンゲはこの家には無いらしい。仕方無くスプーンを添えた。カウンターの椅子に座るのは辛そうだったから、ソファ前のローテーブルに支度した。
「──あーん、は?」
目の前に置かれたお粥を見て顔が一瞬華やいだ。でもその直後、ねだるような目で私を見た。ソファ前に二人並んで座ってあーんとか。付き合って2日目とは思えない状況だ。
「えっと……やって欲しい、の?」
「俺、着替え頑張ったじゃん?」
ほら、と催促するようにスプーンを私に手渡した。怜、本当にやって欲しかったんだ。ちょっとびっくり。
自分で食べれるでしょうに。でも言ったからにはしょうがない。スプーンでお粥を掬って湯気をふうふうと冷ます。
「はい、あーん……」
素直に怜が口を開く。そっとスプーンを彼の口の中に運ぶんでスプーンを引っ込めた。
「うまい」
「良かった。じゃあ」
もう自分で食べれるよね、とスプーンを渡そうとした。
「もっかい」
「え」
仕方無く、再度スプーンを運んだ。このやり取りが延々と続き、結局お粥一杯分は私が全部食べさせた。
「自分で食べられたよね?」
「頭痛い。熱上がったかも」
「だったらベッドに」
「もう一杯食べたら治るかも」
「……それ、おかわりってことかな?」
怜はにやりと笑うと「またあーんしてくれたらもう治るな」と言い放った。
「怜の熱はあーんで治るものなの?」
苦笑いしか無い。楽しげに笑う怜の顔色は私がきた時よりも良くなった。気分の問題もあるかもしれないな。
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