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8.
しおりを挟む「……唯?」
気怠く瞼を開ける彼は、熱があるというのに色気が半端無い。熱があってもイケメンはイケメンなのね。病人は大人しくそのまま寝ていればいいのに。
「勝手に入ってごめんね。インターホン押したけど返事が無くて。鍵が開いてたから入っちゃった」
「唯、あんまり、近づかないで」
「何で」
「伝染したくない」
声が掠れてる。話すのもしんどいのかな。
「そんなこと言ってる場合……?ねぇ、体温は?測った?」
「測ってない」
測ってない、だと……?
「体温計、どこ?」
怜は無言のまま目を逸らした。
「怜、もしかして、体温計……」
「体温計無くても治る」
鞄の中から体温計を取り出した。
「これ、使って」
僅かに目を見開いたのがわかった。
「え、これ唯の?」
「まさかと思って持ってきて良かったよ」
この人は体温計の無い家で一体どうやって生きてきたのだろう?
体温計を手渡した。手を動かすのも怠そうだ。
「怜、ちょっと、いい?」
彼の手から体温計を奪い、左脇に挟まるように腕を動かす。熱いな。38度近くあるんじゃないか?
「いつから?熱」
「深夜」
「薬とか」
「ユンケルとポカリなら」
「それどっちも薬じゃない」
今日は日曜だから病院はやってない。休日診療行くほどなのか、どうか……?
「怜、休日診療……」
「寝てりゃ治る」
体温計の合図の音が鳴った。体温計を外して結果を見る彼は、なかなか見せてくれない。
「怜?見せて?」
「……38度2分」
怜が渋々告げた通りの結果が表示されていた。
「薬、買ってきたから。後で飲もう?何か胃に入れないと」
「……食欲無い」
「お粥、作ろうと思ってたんだけど」
「唯のお粥だったら、食べたい」
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