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6.
しおりを挟む『熱?具合悪いの?』
あの電話の後に体調崩したのか。一人暮らし、だよね?
『食欲無いし、ちょっと動けない』
文字を打つのもしんどいのかもしれない。通話ボタンを押す。
「怜?しんどいとこごめんね。大丈夫?」
「大丈夫ではないな」
声が掠れてる。息も荒い感じがする。
「ねえ、怜って、一人暮らしだよね」
「ああ」
「ご飯とか、飲み物とか、薬とか」
「何とかするよ。大人だし」
「住所教えて。行くから」
「駄目だ。唯に伝染したくない」
「いいから。喋れるうちに住所教えて?私がインターホン押したら、その時は頑張って出てね?」
渋る怜を説き伏せた私は、いつもの何倍かの勢いで身支度を終わらせた。
怜の家は東山線沿いの、静かな住宅街にあった。マンションのエントランスで部屋番号を入力してインターホンを鳴らす。
「はい」
「唯です」
インターホン越しに聴く怜の声は、やっぱりつらそう。無機質な音と共に、マンションの中扉の鍵が開いた。
最上階のボタンを押す。家賃高そう……。いや、分譲なのかしら?
怜の部屋、ここだよね?さっきエントランスで入力した部屋番号は合ってたみたいだから大丈夫だろう。治安の良い地域、駅近、マンションの最上階の角部屋って。そういえば行政書士さんだっけ。行政書士って儲かるのね。
インターホンを押す。……出てこない。大丈夫かな。中で倒れてるんじゃ……?
試しにドアノブに手を掛ける。鍵、開いてる。
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