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5.
しおりを挟む「で、唯ちゃん。俺と、結婚を前提に付き合ってくれる?」
「星宮さん。本当に、いいの?」
ナンパからのサシ飲みが一回。ランチデートが一回。水族館デートが一回。そして今。にんにく効かせたステーキディナー。これを断ったら、流石にもう星宮さんは身を引いてしまうよね。
星宮さんに身を引かせて、私は後悔しないの?
「俺が、唯ちゃんがいいって言ってんの。唯ちゃんこそ、俺と付き合うのがイコール結婚で問題無い?」
星宮さんと付き合うイコール結婚。婚活ってそうだよね。次に付き合う人と結婚するってことは、星宮さんと付き合ったら、彼と添い遂げると。そういうことだ。
「私、ね。もう何度か、星宮さんにどきどきしてた」
口角が上がった彼の顔を、私は直視できない。こんな場面でも、この人は余裕なのかな。私は心臓が口から出そうなんですけど。
「こないだ、水族館の帰りに星宮さん、急に帰っちゃったでしょ。私、何かまずかったかな、とか、ちょっと……悩んで」
「それは」
口角が一瞬にして元に戻った。割と顔に出やすいのかな、この人。
「それは、唯ちゃんがなかなか敬語やめてくれないから……拗ねてた」
「拗ねてたんだ」
吹き出した私を見た彼は、再びむくれた。
「え、今拗ねないでよ」
「どうしようかな」
……ちょっとめんどくさいかも。
「唯ちゃんが俺と付き合ってくれるんだったら拗ねない」
そういうことね。早く返事をしろと。
「──ひとつだけ。引っかかってることが、あるの」
星宮さんの顔が分かりやすく翳った。
「あの居酒屋の階段でのこと。私は、初対面の人に胸を……触られたも同然だと、思ってる」
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