27歳女子が婚活してみたけど何か質問ある?

藍沢咲良

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「もう、あの、大丈夫、なので」
「本当に?」
心配そうな顔で覗き込まれ、更に顔が熱くなるのがわかった。

「熱とかあるなら別日でも」
「だから!大丈夫ですってば。行きましょ。職場のビルの方ですよね」
無双イケメンの顔のアップから逃れようと後ずさる。できない。背後は壁だった。仕方無く足を右に動かした。

「唯ちゃん、職場のビルはこっち」
「あ」
気が動転し過ぎでしょ、私。私の足は職場のビルとは反対方向に向かおうとしていた。

「唯ちゃん、そんなそそっかしい人だった?」
「……誰のせいだと」
「え?」
「何でもありません。行きましょ!」
ずっと繋いだままだった彼の手を左に引っ張って、少し大股に歩いた。くつくつと笑う彼は、すぐまた車道側についた。

大股で歩くと風を感じる。夏の終わりの夕暮れの風が熱くなった頬を優しく撫でた。
「涼しくなりましたね」
「なあ唯ちゃん、その、敬語、やめない?LINEだと敬語じゃなかったじゃん?」
顔を若干強張らせた彼は、乞うように告げた。

敬語か。私、LINEでは敬語をやめるようにしていた。勿論わざとだ。こないだの水族館デートの帰り、彼が西別院で降りた原因は私の敬語にあるかもしれないと思っていた。

そんなことで?と一瞬思ったけれど。でも、健二のときは、ちょっとしたことでへそを曲げていた。スマートな振る舞いをこなす彼も、もしかしたらデリケートな一面がある可能性が頭に浮かんでいた。
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