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6.
しおりを挟む「どの辺りなんですか?」
「会社のビルの裏手にある。よく行くのはランチだけど、夜のメニューも美味いんだ」
屋外の通路から続く階段を降りる。階段の手前で指が絡んだ。恋人繋ぎだ。反射的に星宮さんの顔を見ると「階段、危ないから」とだけ言い放ち、一歩先を歩き出した。一歩先に歩かれるとむしろこちらがバランス崩して危ない気もするんだけど。
でもこれってもしかして……。彼が振り返ったら王子様ポジションってやつでは……?意図せずやってたらこの人は天才だし、意図してやっているのであれば相当な手練なのは確実だ。
「下り危ないから。気をつけて」
爽やかな笑顔で振り返って王子様ポジション。不覚にもドキドキしてきた。これって所謂モテ技なのだろうか?
あれこれ考えていたら自分が無口になっていることに気付いた。いかんいかん、いつも通りに振る舞わないと。
でもいつも通りって?私、星宮さんに翻弄されるの……もしかして、嫌じゃないかも。
ってちょっと待って。私、翻弄されてるの?星宮さんに?あんなに警戒していたのに?
「──唯ちゃん?」
いつの間にか階段は下り終えていた。歩道のポジションは勿論彼が車道側。そういえば佐々木さんは……そもそも歩道まで行ってないか。何せ待ち合わせは駅ビルの激混みスポット。行ったカフェは私の行きつけの、駅ビル内にあるカフェだったんだし。
歩きながらも私の顔を覗き込む星宮さんの瞳は、私ごと吸い込んでしまうんじゃないかと錯覚してしまうような引力があった。
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