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2.
しおりを挟む南極を模倣した水槽で大勢のペンギンがペタペタと歩いている。
「あの子、飛び込むかな」
星宮さんの視線の先のペンギンは、飛び込みやすいポイントでしばらく飛ぼうとして飛ばない。
「後ろの子って待ってるんですかね」
「ペンギンってちゃんと並ぶんだな」
感心したように彼がじっと見入っていると、ついにそのペンギンが……。
「いや飛ばないんかーい!」
ガラス越しにペンギンに突っ込みを入れてる星宮さん、面白過ぎる。
「めっちゃ突っ込みますね」
レアな星宮さんの行動に笑いを堪えていると、恥ずかしそうに私を見た彼は私の手を引いてペンギンの水槽から離れた。
「あれを突っ込まないのは男じゃない」
「突っ込み必須なんだ」
涼しい表情に戻った彼は私の顔を見てまた目を細めた。
「やっと敬語解いてくれたな」
「あ……」
まだ距離感は保っていないといけないのに。迂闊だった。この人と手を繋いで水族館デートはしているけど、星宮さんは簡単に心を許していい人種ではない。
このデートで色んな一面を見せてくれたけど。でも彼との出会いは居酒屋でナンパされたということ。その腕で私の胸の感触を楽しんでいたという事実。そして何より、女なんてよりどりみどりの無双イケメンだという現実は忘れちゃいけない。
「うっかりしてました」
作った微笑みで返す私を見た彼は、瞳が微かに揺れていた。
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