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7.
しおりを挟む水無瀬水族館のイルカショー。冷房のよく効いた館内を星宮さんとのんびり歩いていたらイルカショーの開催時刻が電光掲示板に表示されていた。ちょうど間に合いそうだったから向かったんだけど……。
後ろの座席はそれなりに埋まっているのに、前の方の席は空いていた。前の方がよく見えるだろうに。
「前、空いてますね」
「お、唯ちゃん前行っちゃう?」
「見やすいのになんで空いてるんでしょうね?水族館によっては前の方って有料だったりしません?」
「じゃあ前の方にしようか」
当然のように繋がれた手はそのまま。彼は私の手を引いて、前から5列目の席へ誘導した。
「……?もっと前空いてますよ?」
「唯ちゃん。地面、見てみ」
どういうわけかにやりと笑う星宮さんは目だけで私に示す。
言われるがままに地面を見る。3列目までの地面は水たまりになっていた。4、5列目になると水たまりは減ってはいるけど……。
「星宮さん?」
「ん?」
「ここ、もしかして水が来るとか……?」
「そうだよ。イルカがジャンプしたら当然水が」
「後ろ、行きません?」
「いや、ここでいい」
「濡れますよ?」
「大丈夫」
抵抗する私を置いて、星宮さんは近くを通った売り子に何か話しかけている。ねえ、私とデート中ではなかったの?
売り子から青い何かとタオルを受け取って彼が戻ってきた。
「その、青いのは……?」
「青いのはポンチョ。装備があれば、濡れても大丈夫」
「装備て。ドヤ顔」
くすくす笑いながら私の分を受け取る。ポンチョを開封する星宮さんはちょっと嬉しそう。少年の笑顔。そんな感じ。
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