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6.
しおりを挟む「星宮さん、いつ着いてたんですか?」
「唯ちゃんの乗ってたやつの一本前。早めに着いてのんびりしながら待つのが好きなんだよ」
駅の出口へと自然に並んで歩く彼は目を細めて言い放った。
「でも、私が遅刻してたらすごく待つことに」
「遅刻、してないじゃん。むしろ早かった」
互いの手が触れそうな距離を並んで歩いている。手の甲が触れたら、そのまま自然に手を繋ぐパターンってあるよな。
実は今日私は少しヒヤヒヤしている。今向かっている方向には水無瀬水族館がある。水族館に入ってしまえばきっと大丈夫だと思うんだけど。
佐々木さん、水無瀬港も勤務地に入ってるっぽいんだよね。でもこないだのLINEで「土曜日はどうか」と尋ねられたということは、きっと今日は休み。お休みの日にわざわざ職場の周辺に行くことはないだろう。
佐々木さんとも、星宮さんとも関係性が薄い中での鉢合わせって最悪。関係性が濃くても鉢合わせはしんどいけど。でもどちらにしろ、ばったり会うということは避けたい。
休みの日を1日捧げるのなら、折角ならそれなりに楽しみたい。そう思うのは、ずるい女の考えだろうか?
もう2回手の甲が触れた。多分もう1回触れたら手を握られるのかもしれない。それを避けたかったら距離を取ればいいんだけど。
距離を取るにも私、さっきから壁際にどんどん追いやられているから距離を保つことは不可能だった。そうでなくても、ほんのり香るウッディが私を星宮さんに近づけようとしているというのに。
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