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4.
しおりを挟む「──じゃあ先輩、明日星宮さんとデートってことですか?」
口に運ぼうとしていた生中を右手だけで持ったまま、かすみんは形の良いその瞳を大きく見開いた。金曜夜であるにも関わらず、明日は予定があるから早めに帰ると告げた結果、理由も吐かされた。
金曜夜の、私達の行きつけ。星宮さんに声をかけられたのも、この居酒屋だった。
「急展開ですね。たったの一週間で彼氏と別れたばかりの人があのイケメンとデートとか。てかもうデートしてましたよね?」
「え」
「ランチ。行ってましたよね?可愛い後輩のランチの誘いを断ってでも行くランチって、相手がイケメンと相場が決まってますよ?」
「いやそうとも限らな……」
「田舎からお母さんが出てきたとかじゃないでしょ」
「そりゃ私、出身水無瀬だし」
「ランチデートの報告、私受けてないんですけど?」
星宮さんとのランチについて、かすみんに報告はまだ出来ていなかった。月曜に行って、今日既に金曜なのに。私の外回りとかすみんの外回りの予定がうまく噛み合わず、結局今日になってしまった。
かすみんはかすみんで、あの夜仲良くなった綾瀬くんとは連絡を取ってはいるらしい。そっちの話こそ、私聞きたいんだけど。
「で?例のランチは誰と行ったんですか?」
「……星宮さん」
「やっぱり星宮さんでしたか。先週ここで声かけられて、そこから連絡取ってるんですか?」
いくらなんでも、そこまで私はチョロくない、はずだった。星宮さんとランチに行くまでには紆余曲折が多少なりともあったんだけど……。
「そういうわけでも、なくて」
「……先輩、今日はちゃんと吐くまでほんとに返しませんよ?」
にやにやしつつも、早々と次のお酒をメニュー表で選ぶかすみんを前に、私は洗いざらい吐かされる覚悟を決めた。
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