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4.
しおりを挟むしれっと次の約束も取り付けるあたり、この人は相当やり手なんだろう。
「唯ちゃんさ、まだ敬語は崩さないの?」
「……いきなりタメ口で話せるメンタルは持ち合わせてないので」
「俺タメ口がいいんだけど」
ちょいちょい出てくる星宮さんの軽さに警戒しつつ、仕事用の微笑みで対応していると、鰻の蒲焼を彷彿とさせる鮭ハラスの焼き魚定食が目の前に置かれた。
「え、美味しそう」
「だろ」
直前までの星宮さんのチャラさがどうでも良くなるぐらい美味しそうな焼き魚が目の前で私に食されるのを待っていた。
「いただきます」
彼に続いていただきます、と小さく声に出して食べ始めた。いただきます、がちゃんと言える人なんだ。
健二は付き合うまでのデートではいただきます言ってたけど、慣れてきた頃にはもう言わなくなった。私の手料理であっても、だ。
この人は、どうかな……?
……って!何付き合う前提で考えてんの私⁉︎昨日マッチした……ええと……何さんだったっけ?後でスマホ見て確認しよう。そう、そのマッチした人とまだ挨拶程度のLINEしか私してないのに。
昨日の今日で違う人と2人きりでランチしちゃってる私って何だろう?鮭ハラスは美味しいけどさ。……うん、白米には焼き魚がよく合うよね。お味噌汁も漬物も美味しい。盆に一緒に載ってた小鉢の煮物もほうじ茶も美味しい。
お料理は完璧。The完璧な和食。食べてる私が諸事情あって複雑な気分であるだけで、この店の料理はまた来たいと思わせるものがある。
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