27歳女子が婚活してみたけど何か質問ある？

5.

「あの状況ではあんな言い方されても仕方無かった。俺、挽回したいんだよ」
「挽回……？」
自分をセクハラ痴漢男呼ばわりした女に対して。ナンパ野郎扱いもしたのに。実際ナンパだったけど。

「俺の行きつけの居酒屋、美味しいんだ。一緒に行こう？」
「居酒屋……」
「それが嫌ならランチでもいいけど。今日の昼はどう？」
「急ですね」
急過ぎる誘いに互いにふっと笑いが漏れた。違うエレベーター20階に到着したことを告げる音がフロアに響いた。もうすぐ社内の人が沢山来るだろう。

朝も早よから目立つのは得策ではない。特に同じ課の一部の女子──若い子ならまだしもお局様だと尚更厄介──に今の状況を目撃されるのは良くない。そうでなくても星宮さんは無双イケメンで、その場にいるだけで目立つというのに。

「後でLINEします。12時に２階のホールでいいですか？」
「ああ。楽しみにしてるよ」

じゃあ、とこちらを一瞬振り返り、星宮さんは爽やかな笑顔を私に向けてエレベーターに消えていった。と同時に、見覚えのある社員が数名こちらに向かって歩いてきた。その中にお局様の姿があった。星宮さんを早目に帰して正解だった。

お局様がこちらに気付くその前に、回れ右をして自分の職場へと向かう。私、何で承諾したんだろう。まあ、同じビルの人だし。うまく付き合っていた方がいいよね。

名刺に印刷された行政書士という肩書きが魅力的だったのは……はい、否めません。これではその他大勢の女だな。