40 / 244
3.
しおりを挟む香水というものは、身に付ける人によってはとても軽薄に思えることがある。例えば、サムライは大学生ぐらいの若い男の子から香る印象がある。
私の偏見だけれど、サムライを身に付けている大学生男子はイキっている傾向が強い。全員が、とは言わない。でもあまりいい印象は無い。
社会に出ている人でサムライの香りがする人は、何となく距離を置きたくなってしまう。まあ、健二は、サムライを付けていたけれど。
星宮さんからはウッディの匂いががほんのり香る。サムライでなくて良かった。サムライが香る男性は香水に慣れていない印象だ。これも私の偏見。
香水に慣れていないが故に付けすぎて、こちらが咳き込んでしまう程の匂いの強さを放つ人が多い。電車やエレベーターという密室で遭遇したら軽く地獄だ。
星宮さんは香水の扱いに慣れているんだな。それがプラスなのかマイナスなのか。大人の嗜みをクリアしているという点ではプラス。
それなりに遊んできたんだな、という更なる私の偏見が働くという点ではマイナスかもしれない。うん、余計なお世話。私、何様?
気をつけないと、星宮さんの胸に私の顔がぶつかりそうだ。彼のカッターシャツに口紅がつくという迷惑行為だけはしないように気をつけないと。
前を向いていると本当に口紅がつきそう。顔を上げると、さっきの動揺はもう消えた、余裕そうな表情の彼と目が合った。
「星宮さん……いい匂い」
何を口走っているんだ、私は。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
21
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる