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しおりを挟む同じビルだったのか。でもうちの社で見たことの無い人だから、きっと違う会社なんだろうな。このビルは30階まであるから、入っている会社も2つ3つではない。
このビルの縛りで異業種交流会をしたとしても、誰がどの会社なのか、覚えていられない自信でいっぱいだ。
パッと見だけでは士業なのか、人材派遣会社の人なのかはわからない。はたまた、私と同じ、まさかの『クロセ製薬』の人なのか。
あんなやり取りがあったんだから、出来れば社外の人であって欲しい。ていうかあんなやり取りがあったのに普通に声掛けるのね。自分をセクハラ痴漢男扱いした女になんか、声掛けなきゃいいのに。
この人の危機管理能力はどうなっているのだろう?私が今ここで、金曜日の出来事について大きな声で話す可能性だってあるというのに。
「おはようございます。職場、このビルだったんですね」
「あ、ああ……。25階の、水無瀬経営」
金曜日のことについて話す気は無かったけど。話さなくて良かった。士業かもしれない人を敵に回すのはまずい気がする。そうでなくても、職場近くの人との揉め事は避けたい。
「唯ちゃんは?どのフロア?」
目の前のエレベーターのドアが開いた。足を進めると、星宮さんと共に壁に密着状態になった。
「20階です。クロセ製薬」
ドアに近い人が20階のボタンを押したのを確認して、星宮さんに顔を向けた。思っていたよりも近くに……というよりも、彼の胸が目の前にあった。咄嗟に距離を取ろうにも、缶詰状態のこの環境では不可能だった。
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