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それでも日常は、やってくる
しおりを挟む月曜日の朝。初めての婚活から通常モードの自分に戻って職場に向かう。私の勤務先は水無瀬駅から徒歩数分の複合ビルの中にある。
地下鉄の改札からビルの入り口までは地下街の通路が繋がっている。外の暑い空気に触れずに職場に向かえるのはありがたい。
オフィスエントランスエレベーターに辿り着くまでの階段が今日も長い。エスカレーターに乗ってもいいけどね。でもヒールのままでこの長い階段を登る毎日に慣れた私の脚は、エスカレーターに甘やかされると落ち着かない。
息を乱すこと無くエレベーターの前に辿り着いた。ここで息切れしてたらカッコ悪いよね。
何となく上を見上げてエレベーターを待つ。エレベーター待ちの人って上向いてるかスマホいじってるかのどっちかだ。……でなければ知り合いに声を掛ける、とか。
「──唯ちゃん?」
他に唯という名前の人がこの場にいなければ、名前を呼ばれたのは私、なんだろうな。声のした方へと振り向いた。固まった。
目が合ったのは、金曜夜に私をナンパした挙句、ハプニングによりラッキースケベを享受した男。私が階段を踏み外しそうになって支えてくれたタイミングで私の胸の感触を楽しんでいた、あの男だ。
「ほ…し、みや、さん……」
あの夜、私、彼に最後なんて言ったっけ……?うわー、覚えてない。セクハラ痴漢男扱いしたという記憶だけは覚えている。
当の彼は、あの日と同じようにスーツを着ていた。違うのは、動揺が顔に少し出ていた、ということだ。
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