37 / 244
8.
しおりを挟む男女が連絡先を交換しているというのに、こうも事務的になるものなのだろうか。
カップル成立といえども、初対面だしね、私達。惚れられてる実感も私から惚れたという実感も無い。私達の間にあるのはぎこちなさだけ。
『あの集団の中から選ぶなら』という縛りの中で成立しただけのこと。期待し過ぎはNGなんだろうな、きっと。
「じゃあ、またLINEします。失礼します」
「あ……はい」
あっさりと駅へと向かう彼を追いかけるのも、ご飯やお茶に誘うのもハードルが高過ぎて。
カップル成立したんだから「ちょうどいい時間だし、この後ご飯でも……」って展開があるのかと思っていた。カップル成立したにも関わらず、私、今日は1人で晩御飯を食べるのね。
まさかの肩透かし。19時からのパーティーに参加する、という図々しくも強かな案は現実的だったのかもしれない。
今日はご飯を作る気にはならない。どうしようかな。こんなときの私の行きつけ。大将の店のカウンターで焼き鳥かじってビール飲む。これだな。
恋が始まるかもしれなかったのに。始まる気配が全く無い。……そうか。婚活というものは恋ありきではなくて結婚ありき、なんだよね、きっと。
最寄り駅から歩いて数分。角にあるお店が大将のお店だ。今日はここで、大将と女将に私の嘆きを聞いてもらおう。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
21
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる