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4.
しおりを挟むかすみんは綾瀬くんと意気投合したのか、ずっと二人の世界で話していた。私の手元の大魔王は残りあと一口。
「かすみん、私、明日の朝早いの忘れてた。ごめんけど、今日は先に行くね」
「え、唯先輩。私も出ますよ」
慌てたかすみんの手元には珍しく杏露酒ロック。可愛らしいお酒にしたつもりなんだろうけど、ロックの時点でお酒好きがバレてるぞ?
「俺が送るから。かすみちゃんはまだ楽しんでて」
私が席を立つと同時に、星宮さんも席を静かに立った。私が立ったときには椅子が床に擦れて鈍い音がしたのに、彼は音を立てずに上手に立った。何から何までスマートなんだな。立ち居振る舞いは素敵なんだけど、何せ私はナンパされた身。やはり警戒は解いてはいけない。
「え、いいですよ」
「いいから大人しく奢られてよ」
お会計で伝票を出したときのこと。星宮さんは自分の伝票も重ねて「これも一緒で。カードで」と、店員にさっと自分のクレジットカードを渡していた。彼の差し出したカードは黒いカードだった。見た目ブラックカードに見えるが、旅行好きの人御用達のプラチナカードだ。なんでそこまでわかるのかって?だって私も同じカードを持っているのだから。何なら、今日の会計もそのカードを使ってポイントを貯めるつもりでいた。
「ご馳走さまでした。あの、そのカード……」
「見た目ブラックカードっぽいでしょ。残念ながらブラックじゃないんだなあ」
「私もそれ、持ってます」
「え、唯ちゃんも旅行好きな人?」
「好きですけど。でも星宮さんとは行きませんよ?」
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