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お持ち帰りなんて、させない

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店内を見渡す。満席というわけでは全く無く、この人が座るスペースは私の隣でなくても複数あった。
「あの……ここ、座られる……んですか?」
「ああ。何かまずい?彼氏に怒られちゃう?」
「そんなわけでは……無い、ですけど」
この人、私の隣の席で飲もうとしてる?このまま私の隣に居座ろうとしてる?──つまりこれは、ナンパというやつ、でしょうか?

その人は静かに椅子を引いて、私の隣の席に座った。近くに用意されていた足元のカゴに私の鞄を入れるのを勧めるあたり、この人はこういうことに慣れているのだろう。

「何飲んでるの?焼酎?」
さっきかすみんが注文してくれた生ビールはとっくに飲み干していた。彼女がお手洗いに行っている間に大魔王のロックを注文していた。
「大魔王、です……」
見知らぬ高身長イケメンに告げる銘柄ではない。しょうがないじゃん。今日はかすみんとしか一緒に飲むつもり無かったんだから。

「ごついの飲んでんね」
ふっと笑うと、彼は店員さんを呼んだ。
「大魔王、ロックで」
「飲むんですか」
「俺も芋好きなんだ」
笑うと可愛いじゃん。高身長イケメンで笑うと可愛い。スーツも似合うとなれば、私の中では最強無双イケメンだ。私の生活範囲には生息していない生き物。こういう絶滅危惧種は国が本気出して保護した方がいいと思う。

彼の大魔王が運ばれると同時に、かすみんが戻ってきた。
「唯先輩!いいのが落っこちてましたよ!」
「落っこちてたって……俺、倒れてないよ?」

かすみんが連れてきたのは、私の隣に座る、名前もわからない高身長イケメンと同じくらい無双感漂う、やはり高身長イケメンだった。
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