星をくれたあなたと、ここで会いたい 〜原価30円のコーヒーは、優しく薫る〜

3.

「めっちゃ美味しい！」
「粉末ソース、結構うまいよな」

そりゃね、毎日自炊してるそうちゃんと実家でお母さんのご飯食べてる私ですから。でも、私だってそれなりに上手いはず。家庭科は５か４しか取ったこと無いし。

「今度は私、全部やるからね？」
「あ、ああ……楽しみにしてるよ」

引き攣った笑顔。何故？でもただ焼きそば食べてるだけだし、こないだとは違う引き攣り方だから気にしなくていいのかな。

蝉が遠くで鳴いてる。週明けから始まるテストをクリアすれば、大学入って初めての夏休みの始まりだ。勿論、そうちゃんと過ごす初めての──子どもの頃にも夏休みに遊んだことはあるかもしれないけど──夏だ。

夏を楽しむ前に、そうちゃんのこないだの告白の続きを聞かないといけない。私が直接そうちゃんから聞けたのは私をずっと探してたことだけだった。学内で聞いたそうちゃんが取っ替え引っ替えしていたという、肝心の話には、まだ辿り着いていない。

その話をさせるには、目の前のこの屈託の無い笑顔を失わないといけないのか。でも、避けて通っちゃいけないのは間違いない。

「せめて食器洗いだけは私がやるよ」
「一緒にやれば早く終わるじゃん？」

結局またキッチンに２人並んで立って洗っていた。夫婦ってこんな感じなのかな。

「──夫婦みたいだな」
「そうちゃんも思った？」

ふふっと笑みをこぼして彼の顔を見た。ふと、顔が近づいて目を閉じた。柔らかい感触が唇に伝わる。泡のついたスポンジを握ったまま、不安定な重心で深くなりゆく口付けを受け止めた。